二つの封筒問題|パラドックス

二つの封筒問題|パラドックス株式投資に役立つ心理学044229044229

AさんとBさんに、お金が入っている二つの封筒が配られました。
二つの封筒のうち、1つには二倍の金額が入っていることがお互いに告げられています。

配られた封筒を開けると、Aさんの封筒には1万円、Bさんの封筒には2万円が入っていました。
このとき、相手の開けた封筒にいくら入っているのかは、お互いにわかりません。

相手の金額を知る前であれば、封筒の交換を申し出ることができます。
AさんとBさんは交換を申し出るべきでしょうか?

もう片方の封筒の期待値

まずはAさんの立場になって考えてみましょう。

自分の封筒の中身が1万円ならば、Bさんの封筒の中身は5千円か2万円のはずです。

損したときは5千円減るのに対して、得したときは1万円増えるのですから、感覚的にも交換を申し出た方がよさそうです。

期待値を計算してみると
(5千円+2万円)÷2=12500円になります。

1.25倍の金額が期待されるのですから、やはり交換を申し出た方がよいでしょう。

続いてBさんの立場になって考えてみましょう。

自分の封筒の中身が2万円ならば、Aさんの封筒の中身は1万円か4万円のはずです。

こちらも期待値を計算してみると
(1万円+4万円)÷2=25000円になります。

同じく1.25倍の金額が期待されるのですから、Bさんも交換を申し出た方がよいことになります。

パラドックスの罠

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これには少し違和感を覚えます。

実際に交換したときはBさんが損するのですが、期待値的には二人ともプラスです。

どちらかが得をしたときに、必ずもう片方が損をするようなゲームで、このようなことがあり得るのでしょうか?

この問題は二つの封筒問題とよばれていて、モンティ・ホール問題と同じく確率のパラドックスとして有名です。

二つの封筒問題(開封前)

二つの封筒問題はいくつもの錯覚によって、確率の間違いを起こしやすい問題です。

わかりやすくするために、少し問題を変えてみましょう。

AさんとBさんに、お金が入っている二つの封筒が配られました。
二つの封筒のうち、1つには二倍の金額が入っていることがお互いに告げられています。

開封前であれば、封筒の交換を何度でも申し出ることができます。
AさんとBさんは交換を申し出るべきでしょうか?

最初の問題と違うところは、封筒がまだ開けれれておらず、中身の金額がわからないということです。

このとき、自分の封筒の中身をx、もう片方の封筒の中身をeとすると
e=0.5(x/2)+0.5(2x)=1.25xとなります。

もう片方の中身に1.25倍の期待値があるのですから、AさんBさんともに封筒の交換を申し出るはずです。

しかしこの考え方だと、お互い永久に封筒を交換しつづける、という奇妙な結論に至ります。

無限に期待値が膨らむ錯覚

この問題は、交換後の期待値が常に1.25倍である、という錯覚によって起こります。

もしそうであるならば、1.25×1.25×1.25×・・・と無限に期待値は膨らんでいくはずです。

しかし実際は、以下のように考えることで錯覚から抜け出すことができます。

A)交換後の中身が倍額だった場合
交換前の中身は必ず半額(x/2)である。

B)交換後の中身が半額だった場合
交換前の中身は必ず倍額(2x)である。

つまり、交換しつづけても半減と倍増を繰り返すだけなので、期待値は一定で変わりません。

この錯覚は、交換後の金額を基準点として、次の交換後の期待値を計算できるという勘違いから起こります。

交換後に倍額になる確率は50%ではありません。
交換後に倍額になる確率は0%か100%なのです。

封筒の中身の組み合わせ

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ではもう一度、Aさんの立場になって考えてみましょう。

封筒の中身が1万円と2万円の組み合わせである確率をpとすると
封筒の中身が5千円と1万円の組み合わせである確率は1-pです。

どちらの組み合わせでも、中身が1万円である確率は50%です。

よって、Aさんの開けた封筒の中身が1万円である確率は
0.5p+0.5(1-p)=0.5になります。

ですが、ここで重要なのがp=0.5ではない、ということです。

封筒の中身が1万円と2万円の組み合わせである確率と、5千円と1万円の組み合わせである確率は等しくありません。
金額の組み合わせは、中身を入れる人のさじ加減によって決まるからです。

もし仮に、封筒の中身が半々の確率で(1万円と2万円)、(1万円と5千円)という組み合わせであるならば、先に述べたとおり、Aさんは封筒を交換した方がよいことになります。

e=0.5(2万円)+0.5(5千円)=12500円

しかし、この場合はBさんは絶対に交換に応じません。
なぜなら、封筒の中身がこのような組み合わせだった場合は、2万円が入っている封筒を開けたBさんは、交換すれば必ず損するからです。

Bさんが交換に応じるのは、交換したときに倍額の4万円になる可能性がある場合だけです。

二つの封筒問題の解答

二つの封筒問題は数字の錯覚を起こしやすく、数々の議論が繰り返し行われてきました。

実は、上記に述べた考え方も、錯覚による誤りが含まれています。
以下に、正しい考え方を示します。

【解答】
封筒の中身をそれぞれx、2xとします。

1)受け取った封筒がxならば、もう片方の封筒の中身は2x
2)受け取った封筒が2xならば、もう片方の封筒の中身はx

封筒を交換した場合、前者はx円の得をして、後者はx円の損をします。

e=0.5(2x-x)+0.5(x-2x)=0

つまり、最初にあげた問題の条件であれば、封筒を交換しようがしまいが、期待値は変わらないということになります。

この問題のポイントは、従属事象にもかかわらず独立事象のように扱ってしまうため、錯覚が生じることです。

二つの封筒の中身は(x、2x)でなければならないのに、自分の封筒の中身を基準として、もう片方の中身を(x/2、2x)と考えてしまっているのが誤りです。

ですから、封筒を交換したときに、期待値が1.25倍にあがるように考えるのは錯覚です。
正しくは、pの確率で倍額になるか、1-pの確率で半額になってしまう、といえるだけなのです。

確実に倍額になるのは、封筒の中身が奇数だった場合だけです。


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