行動経済学でいうヒューリスティックは、日本語では簡便法や発見法、または近道などといわれます。
ヒューリスティックは問題を解決するときに、はっきりとした手がかりがない場合。
本質的な問題解決を目的とせずに、とりあえずその場の都合に合わせて対処していく方法です。
かの有名なアルバート・アインシュタインは、ノーベル賞を受賞した1950年の論文で、「不完全ではあるが役に立つ方法」とヒューリスティックについて述べています。
また数学者G・ポリアはヒューリスティックを「発見に役立つ」という意味で用いました。
さらに数学的な問題解決においても、ヒューリスティックが有効であることを示すために、一冊の書物を書いて世に出したのです。
ヒューリスティックに対比されるのがアルゴリズム。
ヒューリスティックが便宜的な方法だったのに対して、アルゴリズムは厳密な解を得るために手順を踏んでいく方法です。
アルゴリズムのわかりやすい例として、三角形の面積を求める公式があります。
三角形の面積=(底辺×高さ)÷2
公式に当てはめれば、三角形の面積は必ず求めることができます。
このように手順を踏んで解を求める方法を、アルゴリズムといいます。
ヒューリスティックには、ある程度満足のいく回答を素早く出せるという利点があります。
しかしヒューリスティックによる解法は完全ではないので、ときには大きな間違いを生み出してしまうこともあるのです。
その理由の一つとして、私たちが確率の理解がきわめて苦手なことがあげられます。
「人間は、確率を注意深く計算するように進化していない。そうしなければならないような差し迫った必要はなかったからだ」
進化心理学者ロビン・ダンバー
私たちが使う確率という言葉は、「可能性」や「見込み」を意味します。
それらの確率を求めたい場合は、何かしらの根拠に基づき客観的に判断する必要があります。
しかし私たちは直感による主観的な判断をすることが多いです。
そのような主観確率は果たして正確といえるでしょうか?
行動経済学の第一人者であるカーネマンとトヴェルスキーは、人が確率について判断を下すときにはいくつかのヒューリスティックを用いるが、それによって得られる判断には「バイアス」が伴うことを明らかにしています。
行動経済学でいうバイアスは先入観や偏見、心の傾向のことをいいますが、これこそが人々に非合理的な行動をとらせる元凶ともいえます。
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