これはアメリカで行われた実験です。
高校生を二つのグループにわけて、以下の問題を5秒以内に推定してもらう調査を行いました。
A)8×7×6×5×4×3×2×1=( )
B)1×2×3×4×5×6×7×8=( )
こうしてみると、二つのかけ算はただ単に数字の順序を変えただけなので、答えが等しいことは容易にわかります。
しかし、実際の実験結果では、AとBの問題を与えられたグループによって、大きく答えが異なったのです。
計算機を使えばもちろんのこと、じっくり時間をかけて計算すれば、間違えることのない問題です。
しかし、5秒という限られた時間では、それはできません。フラッシュ暗算などの特殊能力を持つ人は除く。
この問題の正解は40320ですが、それはさほど重要ではありません。
先に述べたように、数字の並び方が変わっただけなのに、計算の推定結果が大きく変わってしまったことがポイントです。
問題Aを与えられたグループの解答の中央値が2250だったのに対して、Bの中央値は512だったのです。
両者ともに正解より少ないですが、グループBの方が明らかに少ない答えを推定しています。なぜでしょう?
勘のいい方はもうお気づきかもしれませんが、これは最初に目についた数字がアンカーとなって、推定する値に影響を及ぼしてしまうからです。
問題Aであれば、8×7×6×・・・というように、大きい数字からのかけ算となるので、推定する値も大きくなりがちです。
問題Bの場合は逆ですね。最初に目につく数字が小さいので、推定する値も小さくなりがちです。
アンカリング効果によりバイアスがかかってしまうと、正しい推定を行うことが難しくなります。
しかし、アンカリング効果も上手く使えば、目標設定など、自分の能力を発揮するのに役立つのです。
たとえば、同僚の営業成績がアンカーになり、「負けてなるものか」と奮闘する場合があります。
尊敬する人物をアンカーとすれば、目標も高くなるでしょう。
このように意図的にアンカリング効果を活用して、向上心を高めるきっかけにしてみてください。
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