外観が似たような「パスタ屋さん」が二軒あったとしましょう。
価格もほとんど一緒。両方とも入ったことがないので、どっちのお店が美味しいのかはわかりません。
一軒には行列ができています。もう一軒は閑古鳥。
こんなときに多くの人は行列ができている方のお店を選ぶ、ということが様々な実験から明らかになっています。
わざわざ時間をかけて、行列の方に並んでしまうのはなぜでしょうか?
この時点で得ている確かな情報は、人が並んでいるかどうかだけです。
一番重要な「どっちのお店が美味しいのか?」はわかりません。
すると人は、ヒューリスティックという簡便法を用いて意思決定を行おうとします。
ヒューリスティックとは直感はあてにならないの記事で書いたように、経験則などに基づいて、てっとり早く答えを出そうとする方法のことです。
スマートフォンでお店の情報を調べたりするのは少しばかり手間がかかります。
なので、もっとラクな推論をするのです。
「みんなが並んでるんだからこの店は美味しいに違いない」
こんなふうに考えるわけです。
また、みんなと同じような行動をすれば安心します。
逆に自分が正しいと思っていても、みんなと違う行動をしてると不安になるものです。
このような集団心理を社会心理学で「同調現象」といいます。
長時間並んで食べたものは、不思議と美味しく感じるのはどうしてでしょうか?
実は並ぶという行為自体にも、期待感を膨らませるという効果があるのです。
並んでいるうちに周りの人たちの楽しげな声が聞こえてきて、いやがおうにも気持ちが盛り上がってきます。
そして待ちに待って、ようやく出てきた料理をどうして「不味い」だなんていうことができるでしょうか?
人は認めたくないのです…自分自身の…若さ故の過ちというものを…
なぜオレはあんなムダな時間を…
と、悔恨したくないのです。
なので時間と労力を使って手に入れたものには、それだけの価値があると無理やり思い込もうとします。
そもそも直感があてにならないように、実は人間の味覚もそれほどあてにならないのです。
「料理は目で食べる」という言葉があるように、味覚よりも視覚やその他の情報によって、美味しいかどうかの判断がされます。
つまり「行列ができている」「みんなの評判がいい」という情報は、味覚よりも強い判断材料となるのです。
ですから、よほど自分の口に合わない限り。
そこそこの味であれば、並んで食べた料理は美味しく感じるのです。
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